もっとも、この失敗は民主党だけのものはありません。世の中には、自分を “絶対善” として他人を批判し、全否定することが正義だと思っているひとがいくらでもいるからです。
「バカが多いのには理由がある」 p105
相手に投げつけた言葉は、いずれ自分に返ってくる。こころしておきたいものです。
文と書籍の解説。
正義って、子どもの頃にはもっと良いもので頼りになると思っていた。
けれど年齢を重ねるにつれ、どうも頼りなく信用出来ないもので、取扱注意の札を貼り付けるべき怖いものに感じる――。
まず最初に、政党名が出ていますが、政治――いわゆるイデオロギー――の話をするつもりはありませんのであしからず。ただ、この文に辿り着いた著者の橘玲氏の言い分はこうです。
今までヒーロー然として反対を唱えていた側にやらせてみたら上手くいかず、それは信用をさらに大きく失墜させる。敵対をスローガンにしても、逆に自らががんじがらめに。そして、そもそも勧善懲悪の如き二元論で考えられるものではない。ざっとこんな感じです。
残念ながら、物事が複雑に絡み合う世の中では、正義を掲げてヒーロー然とするのは逆に傲慢にもなる、と悟るのに時間は要りません。元来正義は目まぐるしく形を変えるものだから、むしろそこで惑わされずじっくり俯瞰的に見極めていく能力の尊さの方に惹かれます。
正義は流体。
こんな正義は悪なのかもしれない。
こうは思いませんか?
正義というものが唯一つに固定されていれば楽だと。
それはまるで桃源郷か、はたまたユートピアか。否、ディストピアか・・・。非現実的とわかっていながらも、人間どこかにそんなナイーブさを秘めていて、特に若い時分は経験の少なさから、自信過剰にその一つにすがる。青臭いとはまさにこのことで、そうすることで安心を得るのも否定出来ず。個人的にはそんなちょっと背伸びした過去に顔を赤らめながらも、今一度正義をじっくり考え続けたいのです。
そんな折、世界に目を向ければ、人間の多様性と引替えに不寛容が跋扈する現実が。それを見て、正義とその真理の考慮が必要だなと戒められています。
そこで、有り難いことにその部分に言及した書籍は揃っていますので、その一部を紹介です。
「これからの 「正義」 の話をしよう ――いまを生き延びるための哲学」
「それをお金で買いますか ――市場主義の限界」
「その正義があぶない。」
前の2冊はマイケル・サンデル氏という国内外問わず人気の教授の書籍です。
何が正しいかわからない世の中。
ある倫理に直面し、直感と論理がせめぎ合う。
そうして正義を見極める能力を授けてくれます。有名なトロッコ問題の解説を始め、その視点があったか! と読むたびに心の中で多くの扉を開けてもくれるのです。まさにそれは複眼的に思考や視野を広げること。是非ともオススメしたいです。
また、もし他にも良い本がありましたら教えて下さい。
バカとはどんな人か。
一方、橘玲氏の書籍もとても人気です。
私は気付いたら頻繁に読むようになっていましたが、その内容にはハズレが無く、概ね面白いと感じています。どれも言いにくいことをズバリと言ってくれる本と形容出来るでしょうか。今回取り上げた本書も例外ではありません。
最初は一見何の本だかわからなかったものの、ストレートなタイトルに惹かれて読むことに。ただ、思ったほど過激ではありません。
2012~2014年頃の時事問題に斬り込んでいる本でした。
まずプロローグで 「バカ」 について定義します。彼が言うバカとは?
ファスト思考。
人間にはファスト&スロー思考があると言います。本来求められるのが、じっくり考え、脳への負荷の高いスロー思考。それに対してファスト思考とは、負荷を避け、あらゆる問題を直感のみや短絡的に考えてしまうことを指すのです。
古来から私たち人間はファスト思考を持っているのが悲しいサガだとフォローはしつつ、そんなバカさ加減をテーマごとに面白おかしく斬り込んでいきます。
元々は雑誌の連載をまとめたものですが、教養は詰まっていて読み応えは相当ありますね。
おわりに。
この世には表にも裏にもまだまだ知らないことが山のようにある。そしてそれに気付いて常に考えないといけない。生きることそのものにはそんなプレッシャーがいつもある。橘氏の書籍を読むたびにそう思い知らされます。
今回考えることになった正義についても、要は短絡的なファスト思考が諸悪の根源で、そこにはもっと勉強した上で見極めるという知的作業が必要となる。実は正義とはそんなプロセス自体のことを言うのだろうか。ならばそのプロセスを思いやりとして忘れないという正義感を持っていたい。
やはり正義は流体。私たちは掴み所の無いものを掴まないといけない。