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文慈部:あなたをそこから自由にする名文たち

アートとデザイン

「誰のためのデザイン?」からの文を慈しむ。

現実の世界は大学ではない。大学では、教授たちは人工的な問題を作り上げる。現実の世界では、問題はきれいできっちりした包装に包まれてはこない。問題は発見されなければならない。人は、本物の問題にたどり着くように掘り下げることをせずに、あまりにも安易に表面上の問題のみを見てしまうのだ。

「誰のためのデザイン?」 p304

文と書籍の解説。

私たちが共に歩んでいるがために、いつも何となく認識しているであろうアートとデザイン。そのアートとデザインの違いとは何かを考えたことがありますか?

これは普段あまりなじみのない質問かもしれません。その場合は恐縮です。
そもそもその二つは違うのか。その前提に驚かされ、新たな気付きを覚える方もいるでしょうか。
さてこの答えにはいくつかあるのですが、一番普遍的に通用するそれとしては、各々、世の問題提起と生活の問題解決の違いだと言われます。

デザインの本当の姿は。

そうは言っても、アートも(生活の)問題解決をするのではないかと思われるかもしれません。確かに何らかのモニュメントが人を楽しませ心を癒したりといった目的があるでしょう。しかしながら、例えばあなたの身の回りにある製品。より人が使いやすくなるために、見た目も機能も改良を重ねられていく。そんな実用的で形のある(姿の見える)解決なのだとここでは言わせて下さい。
デザインの本質は、見た目による嗜好性だけでなく、人の生活の問題を抜きに存在し得ません。時折、商業芸術や応用芸術と訳される所以でしょうか。

こうして紐解いていくと、どうやら先の一文にもある「問題」というのはデザイン活動のキーワードになりそうです。かく言う私はデザイン科の出身なので語ってしまいますが、今回お話しする内容は、決して専門外の方に不要なものではありません。むしろ境界を越えて役立つ武器だと信じています。

社会人のセンスはここにあり。

本書はデザインの専門及び研究書に分類されますが、昨今では書店に行けばアート思考やらデザイン思考やらとタイトルに刻まれたビジネス書の類もよく見かけます。まとめてクリエイティブ思考とも。
それらにたいてい共通するのが、何が求められて何をすべきなのかという問い掛け・・・つまり問題を重んじている部分です。

どんな問題を自らで設けるか。それによって結果や出来が変わることは言うまでもありません。やや乱暴な言い方にはなりますが、どんな職業であっても、その発見する能力にこそセンスが問われ、仕事の出来る出来ないもここに収束すると言っても過言ではないのです。
また社会に出れば、常に自主的なシミュレーションの必要があり、誰も何も与えてはくれません。このようにして、良い答えよりも良い問題、さらには良い疑問と質問。”新しい” ということよりも、気付かれないことに気付くこと等が大きな切り札となっていきます。
ただこれらは特別珍しいことでもなく、つまるところ、本質を見抜くことなのです。

おわりに。

デザインの世界で25年以上にもわたって愛読され続けた本書。もはやデザインに携わる者たちのバイブル。特に年月を越えて不変の思考法がここにありました。
しかしこの本はとても分厚く、その分野でない人にはマニアックに映るでしょう。著者のD・A・ノーマン氏はそれを見通してか、「デザイン思考が世界を変える」という別の書籍を推薦しています。こちらはビジネス書です。

今回はデザインから問題発見を通じて、本質を見抜く目に至る論理に行き着きました。その論理に気付かせてくれた本書に感謝。皆さんの今後のお役に立てるようにそれを心から伝えさせて下さい。

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論

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D. A. ノーマン
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ブンジブ主筆、そして編集長。知的好奇心は尽きず、月30冊の読書量をもっと増やしたいと願う毎日。