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文慈部:あなたをそこから自由にする名文たち

科学

「個性は遺伝子で決まるのか」からの文を慈しむ。

PTSDは、なにも気弱な性格の人がなりやすいわけではなく、ベトナム戦争や湾岸戦争に出兵した屈強な米軍兵士のなかにも、戦争そのものへのストレスから発症した人が多くいたと伝えられています。
PTSDは、強烈なショック体験などがなければそもそも発症しないので、ショック体験という環境的要因に心が強く影響を受けて生じたといえます。

「個性は遺伝子で決まるのか」 p69

文と書籍の解説。

心の病の一つと言われるPTSD。正式名称は「心的外傷後ストレス障害」。
現代の日本では名前だけなら聞いたことがあるという方も増えつつあるのではないでしょうか。あなたは如何ですか?
さて今回はこの病気のみならず、心の病全般が誤解されることもある世の中を認めた上で、そのフォローともいえる一文に出会い、載せたいと感じました。

それは何故か?

この考えは間違ってますか?

私自身はこの手の専門家ではないとはいえ、あくまで世間一般からの比較をすれば、恐らくは心の病の罹患者ないしはそれに準ずる人物には会ってきた方だと思われます。慣れもあり、理解はあるつもりです。そして理解してあげたい。だからこそこの件に関して筆を執り、まがりなりにも弁護出来たらと願った次第なのです。

まず最初に、誠に勝手ながら、心の病という表現には個人的に違和感を覚えてしまいます。
そもそも “心” とは何でしょうか?

そんな当たり前のことを・・・とは思わないで下さい。今度は言い方を変えて、こんな表現では如何でしょうか。
心という物体はありますか?
つまり、そういう臓器があるのですか?
まさか心臓のことではないですよね?
心の病は心臓の病ではありません。心臓はただ血液を循環させるポンプ・・・。
これは別に揚げ足を取っているわけではないのです。ただ、どうしてもこの件に関してのみ、”心” という単語が実態の無い観念的な存在に思えて仕方ないのです。わかりやすく言い換えれば、心という臓器など無いので病気になりようがないとすれば良いでしょうか。

人間のタブーに触れる。

いずれにしても、手に取って感じることが難しい、どこか形而上的で非科学的な話が誤解を招く一因なのだろうかと感じさせます。それが高じて、心が強いだの弱いだのというただのメンタリティだけの問題として決め付けられてしまうことへの無念さが残ります。そんな折、専門家である著者·小出剛氏のこういった一文が広く届いて欲しいと切に感じるのです。
繰り返しますが、私は専門家ではありません。専門の方をさしおいて未熟な考えだとは重々わかっています。

私事にはなりますが、創作活動や広告関連の勉強から、いつしか脳科学や遺伝子工学の文献に触れる機会が多くなりました。そのたびに、今回追求した “心” の問題も、実は脳の機能不全や遺伝子の影響が大きく、それは時にタブーであれど見過ごせない現実だと思い知らされるのです。本書においても例外ではありません。PTSDのみならず、自閉症やアスペルガー症候群等にも真摯に言及しています。

おわりに。

総じて、遺伝も性格も個性としての良し悪しを越えて、受け容れることが大切とのメッセージ。だからこそ私たちの身近で気付かぬうちに恐ろしい差別になってしまう一例として、血液型のことを懸念しています。遺伝的要素に対して決め付けはどうなのだろうと私も思います。

本書は一部専門の表現があり、難解に感じてしまう箇所もありました。ただ冒頭にてわかりやすく書くことに努めたとの著者の文言通り、概ね楽しめました。遺伝と性格の関係を正しく知るには温かみのある本です。

著:小出 剛
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ブンジブ主筆、そして編集長。知的好奇心は尽きず、月30冊の読書量をもっと増やしたいと願う毎日。