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文慈部:あなたをそこから自由にする名文たち

歴史

「ルーズベルトの開戦責任」からの文を慈しむ。

共産主義者や過激分子は私の議員活動の業績を貶めようとやっきになっていた。(中略) 市民権問題、黒人の地位向上と機会均等の保証、マイノリティグループの保護。私はこうした問題に真摯に取り組んできた。リンカーンの精神に恥じない活動をしてきたつもりである。そうした自負があったから、あえて私に対する誹謗中傷や嫌がらせに耐えることができたのかもしれない。

「ルーズベルトの開戦責任」 p366

文と書籍の解説。

最初に謝らねばなりませんが、今回この一文を取り上げたのは、第二次世界大戦やアメリカとは全く関係の無い理由からです。そこを期待した方には申し訳ありません。
では何か?――最後の部分をご覧下さい。「自負があるから誹謗中傷は耐えられる」 という箇所。そこでこんなアプローチは如何でしょうか。

ここ数年、インターネットの普及率向上に伴い、そこでの誹謗中傷が大きく問題になってきています。この記事の執筆時点でも、とあるTV番組での演出を発端として、その出演者が死亡する事件があったばかりです。どうやら視聴者からの誹謗中傷が引き金に。仮にそれが真実なら、人を一人殺めるほどの状況は憤慨に値します。それ以上の言及は控えますが、ただただ亡くなられた方には心からご冥福をお祈りします。
そこで今回は、誹謗中傷の対処において、私の経験から伝えたいことがあるのです。苦しむ方へ何らかの助力にでもなればと思います。
まず、先の発言の主はハミルトン・フィッシュ。第二次世界大戦時のアメリカの政治家。彼が政治家である事実を考えれば、その発言には深さと生きるヒントが詰まっています。

誹謗中傷は政治家の宿命。

もう少し彼について付け加えさせて下さい。
ハミルトン・フィッシュは共和党議員。ちなみにルーズベルト大統領は民主党。彼は早くから大統領とはニューディール政策をめぐり対立。本書でも一貫して大統領を批判する文言が見られます。原書は1976年のもので、これまでの日米の歴史観を完全に覆す内容です。日本人には必読。
ところでその批判――通常の政策は勿論、真珠湾攻撃の陰謀・スターリンとの蜜月関係等――には相当な信念と確固たる洞察がヒシヒシと伝わってきます。
重鎮だったという彼の立場を鑑みれば、その見解への誹謗中傷もさぞ凄まじかったに違いありません。

一方我が国で、最も誹謗中傷を受けるのは時の総理大臣ではないでしょうか。
良かれ悪しかれ、何らかの誹りを受けるのは半ば宿命です。時折気の毒に思えますが、それがイヤなら辞めればいいとの、これまた誹りを受けるわけです。嗚呼、まさに宿命。国を問わず、政治家の仕事は激務がデフォルトです。

打ち克つにはここを制す。

それに耐えられるか否か――を単に面の皮の問題だけに持っていくのは浅はかです。生来の性質や根性論だけで乗り切るものではありません。
その対処は技術職、つまり習得する努めを要する立派なスキルなのです。

習得にはまず、以下に挙げる2つの心のメカニズムを知る必要があります。

1つ目は人を知っておくこと。生物的にも哲学的にも観念的にも物理的にも。
誹謗中傷をする人の心理・状況にはたいてい共通点があります。確信が持てるようになるまで時間が掛かりますが、そこを見抜ける術は己を楽にします。

2つ目は、この世は信じた人間の勝ちだと思い知ること。
たとえば想像してみて下さい。とある宗教を。
それがいかがわしくとも、人は時に身勝手なまでの狂信で強くなる残酷な現実。同時に、自負になるまで熟考・鍛錬するための時間や金銭の投資も絶対に必要です。

概して、誹謗中傷を気にするなという根性論ではなく、それにも最低限必要なプロセスがあると深く考えなければ、ただの無責任な発言になりかねません。苦しんでおられる方にあけすけなことは言えません。

おわりに。

「信は力なり」。
特に政治・思想の世界はそのもの。そこが対処法のヒントにならないかと発想しました。これらがそのまま解決になるとは言い切れず、それにはもっと紙幅が要ると思っています。
私自身も発信する側の経験で強く悟り、スキルにしてきました。フィッシュのように、未来の姿を強烈に描く信念、そして辿り着いた自負こそが己を救う。その描ける力がスキルであり武器なのです。

著:フィッシュ,ハミルトン, 原名:Fish,Hamilton, 翻訳:惣樹, 渡辺
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ブンジブ主筆、そして編集長。知的好奇心は尽きず、月30冊の読書量をもっと増やしたいと願う毎日。