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文慈部:あなたをそこから自由にする名文たち

西洋の古典

「物語 クラウゼヴィッツ『戦争論』」からの文を慈しむ。

残念なことながら、どんな過酷な戦争や歴史的事件も、時の経過とともに「客観的事実」と化していくのはまぎれもない事実でしょうし、いたし方のないことかもしれません。しかし、歴史は客観的事実を並べる編年史として語り継がれる一方、その歴史的事件に関与した思い -「熱狂」であれ、「猛反発」であれ- と、それを十分に知った上での「醒めた」思いとの二つによって語り継がれる部分があるのではないでしょうか。

「物語 クラウゼヴィッツ『戦争論』」 p305

文と書籍の解説。

特に後半の台詞は鉄則ですね。歴史(的事件)というものを単眼的に見ることには危険がともないます。
わかりやすい構図という理由で一方的に善悪で分けたり、本来目まぐるしく流動する「正しい」という概念の前で思考停止に陥ってしまったり。これらは本質を見誤ってしまいます。

そもそもこの学問は何が起きたかを表層的に覚えるものではなくて、因果関係を解明して深く読み取っていくもの。見えないところほど歴史を支えています。まずそこを踏まえ、立場が変われば見方が変わり、抱く感情も異なる悟性を心の片隅にいつも置いておかねばなりません。
一つのカップを真上から見れば円形、真横からでは長方形と認識するのと同じように。これが後世の人間の使命だと戒めています。

戦争論」の本なのか?

どこまで一般的に流布している定義かは謎ですが、古代中国の「孫子」と並び2大兵法書とされるプロイセン出身·クラウゼヴィッツの「戦争論」。前者は紀元前のものであるのに対して、後者は19世紀の著作です。主観ではその時間差にどうしても居心地の悪さを感じてしまいます。
この気持ちわかってもらえますか?

それはともかくとして、「孫子」と同様に、この「戦争論」も多くの解説書が巷に出回っています。本書はその中の一冊。

タイトルで「戦争論」と銘打ったわりには、あまりその内容には触れられていないような気がします。だからその解説を望んでしまうとガッカリ感は否めません。
どちらかと言えばクラウゼヴィッツの生きた時代背景をはじめ、複雑怪奇なヨーロッパ戦線 (ナポレオン戦争や二つの世界大戦等) の内訳や人間模様、あるいは地政学に触れています。全て著者2人の会話形式で、それらのエピソードは実に満載。これはこれで楽しめてしまいます。だから逆に、「戦争論」というクローズアップされたネーミングにもったいなさを感じてしまうのも事実です。

おわりに。

ただ一歩立ち止まって、何故にこのような内容になったのかを慮ると、難解と言われ分量も多い「戦争論」の真の理解に辿り着くには、背景や予備知識も相当数必要だからなのでしょうか。

そうすると入門書という触れ込みがあるものの、やや上級者向けですね。近代以降の西洋の戦争史を多く知るには悪くなさそうです。そのための教養には困りません。

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ブンジブ主筆、そして編集長。知的好奇心は尽きず、月30冊の読書量をもっと増やしたいと願う毎日。