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文慈部:あなたをそこから自由にする名文たち

世界情勢

「新・戦争論」からの文を慈しむ。

佐藤 民主主義は、独裁と矛盾しません。一○○人の議員が九九人に減っても問題はありません。九八人も問題ない。その操作をずっと続ければ、最後には一人でも問題ないとなる。ドイツの法学者、カール・シュミットが言ってる通りです。

「新・戦争論」 p224

文と書籍の解説。

往年のイギリス首相、ウィンストン・チャーチルの言葉です。
「民主主義は最悪の政治らしい。これまで試されてきた、民主主義以外の全ての政治体制を別にすればの話であるが。
It has been said that democracy is the worst form of government except all the others that have been tried.」

近代以降、民主主義がさも正義のようにまつり上げられ久しいです。とは言え、共産主義や封建主義等の多様な主義の中、民主主義以外のそれらにはよろしくないイメージがつきまといます。
一応民主国日本で暮らす私たちにとっても、どうしても生理的に受け付けないものもあるでしょう。しかしながら民主主義の実体は、独裁と相性が悪くはなかった。今回の一文はまさにその原理を物語っています。こう知ってしまうと、果たして民主主義たるものは皆が信じるほど正義なのでしょうか。

だって選んでしまったから。

先の文は、選ぶ為政者の数を減らしていき、最後の一人でも民主的に選んでいる理屈になります。
さて選ばれた人には権力が集中し、独裁の可能性はやや高し。だってその人物を周りが民主的に選んだから。選ばれた事実は大きなアドバンテージ。
(二言目には) だって選んでしまったから。まるで禅問答のようです。

イヤならば次回選ばなければよい。そんな別の手法もこれまた民主的に与えられています。やや乱暴な流れですが、システム上は問題無いのです。かのナチスも総選挙で勝ちました。それが独裁と相性が良いもので互いに手を結ぶ結果に。これも民主主義。やれやれです。

選び方も原則多数決です。これについても、人数が多ければ正しいのかという問題に直面します。福沢諭吉の著書 「文明論之概略」 にて 「衆論は必ずしも人の数によるものではなく」 と指摘されてもいます。
これにはポピュリズムというワナも存在。つまり人気だけで選ばれてしまったり、間違っている側で盛り上がってしまうこと。かつての独裁者はこの傾向が強かったと記憶しています。
でも選んでしまったから。これも民主主義。

むしろ私たちを独裁して。

大分県にある島・姫島。
ここの村長は50年間無投票当選が続いています。上手く健全にやれているようです。人の質は結果論の要素が強いとはいえ、その人で問題無ければその独裁でも良いとの証です。
やや時代錯誤ですが、古代中国には良い皇帝も悪い皇帝もいました。良い皇帝ならば、権力が集中し独裁してもそれで良かったりもします。
ちなみに先ほどの村長は、選挙のための政治に疑問を投げ掛けています。
(参考文献 「民主主義って本当に最良のルールなのか、世界をまわって考えた」 )

その人で問題無ければとなると、皮肉にも独裁してもらった方が物事がスッキリ決まってしまうことも考えられませんか?
特に昨今、災害のような非常事態時につくづく感じます。責任の所在も曖昧で、合議制であーでもないこーでもないと埒が開かないよりは、全て背負った上でズバッと裁く人材がいれば多少は違うのではないかと。
残念ながら、なまじ自由や民主性を認めてしまうことが足かせだと思わざるを得ません。

おわりに。

あくまで今は消去法で民主主義と付き合う。
そう悟るとこれは正義ではなくむしろ必要悪かと錯覚すら起きます。同時に、自由が強くなればなるほど、時にハチャメチャの一歩手前の独善的で強烈なリーダーシップこそが必要、と覚悟するのが今風の民主主義の姿なのかと思ったりもします。

今回はこれくらいにしておきます。私にはそれ以上はわかりません。もっと勉強が必要ですし、こうして民主主義を考え続けることが民の役割だと信じているのです。

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ブンジブ主筆、そして編集長。知的好奇心は尽きず、月30冊の読書量をもっと増やしたいと願う毎日。