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文慈部:あなたをそこから自由にする名文たち

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「今こそ読みたいマクルーハン」からの文を慈しむ。

ハウツー本は即戦力を高めるのに有効で、大きな存在意義があるのは確かです。しかし即戦力の賞味期限は短く、特に流行り廃りの激しいネットの世界においては、数年で陳腐化してしまうのも事実でしょう。そんな目先の流行に動じない力を身につけるには、根本的な原則を学ばなければなりません。
例えば戦略論ならマイケル・ポーター、マーケティングならフィリップ・コトラーを読むといった具合に、議論の土台や出発点を与えてくれる知識を身につける必要があります。

「今こそ読みたいマクルーハン」 p5

文と書籍の解説。

YouTuberを職業と見なす危険性――。

根本的な原則を学べば動じることは無いというフレーズに異論はありません。
かつてインターネットビジネスの黎明期――2000年代でしょうか――では、「稼げる」 系の情報商材なるものが一時隆盛しては、やがて廃れるの繰り返しでした。商材にはあまりにテクニカルで消費者を舐めたものもあれば、スマートフォンの予想外の出現で、技術の進歩に取り残されたものも。どう鑑みてもそれらは、ビジネスの原則 (たとえば信頼関係のような) の理解力に乏しく、全て淘汰された事実には頷くしかありません。
そこで YouTuber というものを考えてみたいのです。
今や小学生がなりたい職業の上位にランクイン。私自身も動画を年中楽しんでおり、誰もが放送局を持てると考えたら画期的で可能性のあるメディアだと常々思っています。
ただその原則を解析すると、まずその名称に違和感を感じてしまうのは私だけでしょうか。

YouTuber はどんな仕事か。

何故違和感を感じるか。
それは YouTube の商標が前面に出過ぎるあまり、本質がぼやける気がしてしまうからです。どういうことか今から説明していきます。
最初に、職業としての収益構造を解析すると、彼/彼女らはあくまで Google が提供する一サービスの中で生きている (広告収入を得ている) わけで、換言すれば Google への依存状態と言えます。

ならばこういったことが考えられませんか。

万一、Google がそのサービスをやめたなら?
またやめることは無いにせよ、収益構造を都合により改悪・厳格化したなら?
Google という会社のシステムを知れば YouTube が無くなる等の確率は限りなくゼロに近いでしょう。しかし、職業とするなら危機管理としてこれらの考慮は必須です。実際に改悪は過去数回あり、死活問題だと騒がれました。
結局 YouTuber は Google に運命も収入も委ねているのが現実で、仲介やアフィリエイトにも見られる一次的な獲得金ではない弱点があります。

YouTuber の本質はズバリ、ウケる動画や価値あるコンテンツを製作し、どこででも発信するスキルを持つコンテンツクリエイター (デザイナー)。そう言った方が実体が見えるのではないでしょうか。
単に er を語尾に付ける軽さ――その言葉によって論点がずれ、本質が見えなくなれば子どもたちのことが心配になるのです。

マクルーハンとは何者?

マーシャル・マクルーハンはメディア論の元祖。メディアの本質を考えさせる著作を残しています。前衛的でイケてると形容されるその思想は、60年代にブームになりましたが、表現がやや言葉足らずで難解との声も聞かれて久しいです。
(参考文献 「マクルーハンの光景 メディア論がみえる」)
私もメディアへの興味から目を通し楽しんでいるものの、真の理解にはもう少し時間が要りそうです。

そんな中、本書はベストな入門書。専門的で難解な本が多い中でこれは助けになります。そしてマクルーハンは、意外とジャンルを問わずあらゆる書籍において取り上げられるので、頭の片隅に置いておいても損はありません。
今のウェブの世界が見えていたようなマクルーハン。もし生きていたら YouTuber に対し何か懸念を抱いたでしょうか。

おわりに。

以前とあるニュースでこんな場面に遭遇しました。
YouTuber になるための塾。大人が子どもたちに教えていて楽しそうです。その内容はウケる挨拶の仕方とか、どんな格好をすれば良いとか。
あえて尖った表現をすれば、うわべの形ばかりを教えているので悪ふざけにしか見えず危険だと感じたのです。本当は、本質を理解する知性を育て、一人のクリエイターと自覚して価値あるものを製作する原則を美術教育並みに教えなければ、有事の際の対処に困り、路頭にも迷いかねません。原則を学ぶことです。

だから改めて子どもたちと考えたいのです。YouTuber って何? と。

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ブンジブ主筆、そして編集長。知的好奇心は尽きず、月30冊の読書量をもっと増やしたいと願う毎日。